ツタヤ図書館界隈のネタをTwitterで見ていた時に、看過しがたい一文があった。
曰く、以前の図書館には寝ている人間やホームレスが多く、改装によりその手の人間は激減した…という話。武雄のツタヤ図書館を巡る談義の中でも、よりにも寄って当時はまだ市長であった樋渡氏が「ジャージで来るような人は減った、図書館の客がお洒落になった」等と言う市長として欠格なんじゃないかという発言をしていたことがある。

図書館で…まぁ大体の図書館は空調効かせて居心地が良いものであるから…居眠りをする人は、いる。私が良く行く地元の川口中央図書館でも前は良く見た。ちょっと調べものしてパソコンでまとめもしたいなぁ…なんて時にコンセント付きの席で居眠りしている奴を見ると殺意の波動が出そうになる事はある。図書館は本を借りたり読んだりする所であり居眠りをする場所ではない。居眠りが許容される公園でも漫画喫茶にでも行けば宜しい。
そんな事が偶にあり、一人でプリプリ怒ってたらコンセント付き席はいつの間にか図書館カードを提示して(無償ではあるが)、特定の席を借りるシステムに変わった。その際にタブレットとかノートパソコンなど電源を必要とする機器を持ち込んでいることが条件にもなった。お陰様で今のシステムになって以降、調べものするのに席で困ったことはない。また、調べものではなく単純に本を席で読む時に居眠りしてる人を見かける頻度が減った。声掛けの頻度(寝てる人に寝るならどいて~みたいな事を言っているのであろう)を上げたのかもしれない。

また、以前上記の地元図書館でホームレスらしき風体の老女が本を読んでいたことはあった。当然ではあると私は考えているのだが、老女を排除する人はおらんかった。多少匂いが気になるというか、匂い自体はした。だが、本を読みに来る人間は間違いなく図書館を利用する権利を有した人間であろう。単純に暖を取りたいとか涼しい場所に居たいという発想からであっても、そこから読書に繋がるのであればそれはそれで良い事だ。本を読みたい人間が本の在る図書館に居て何が悪い?

エイミー トムスンの作品でヴァーチャル・ガールという作品がある。今回の題材にドストライクな図書館とホームレスが関係するお話であり、みんな大好きハヤカワのSF小説だ。金髪にオッドアイの美少女マギーが出てきてなんと彼女はAI(人工知能)を搭載したアンドロイドであるっちゅー、ある意味では大変に日本のオタク受けしそうな作品なんであるが、この話の後半にホームレスと化したマギーが図書館を使う描写がある。そこでの出会い(?)が物語後半のキモになっていくのだけれども、この作品のような形ではなくとも(ちいとあの出会いは特殊ではあるからな!)図書館には人の人生を変えていく可能性がある。 (のだが、ヴァーチャル・ガールがどーにも図書館で見当たらないのは如何なものか。ハヤカワも絶版にしてる臭いし…)
一冊の本が人生を左右するなんてのは良くある話。このBlogを読んでいる諸兄も自分に強く影響を与えた本を数冊挙げることだろう。
その「人生を変え得るポテンシャルを持った本」というものが万単位で収められて、自由に無償で誰でも読むことができるのだから、そらもー図書館は完璧に人生というものを左右する事甚だしく、場合によってはホームレスの皆様の人生だって変え得る。(場合に寄ってはと書くのは、大変残念なことに「必ず」変わるわけではないし、多くの場合は変わらないであろうという諦観もあるからだ。流石の私もそこまで能天気ではない)
図書館は娯楽施設でも商業施設でもない、社会教育施設である。この事は図書館法にも冒頭で触れられている。もしもホームレスであるとか衣服が粗末であるからとか体臭がきつい事で利用が妨げられるなら、それはそれで大問題だろう。(公共財に触れるのであるから汚れがひどい場合は相応の対応が求められるだろうが、それはきちんと手を洗おうとかその辺の話だ。無論ホームレスであるとかその辺関係なく利用者全員が徹底すべき話である)
図書館が商業施設化し、その様な人々を排斥するのであれば、それはもはや図書館ではない。恐らくこの様な発言をしている人々はそれほど深く考えていないのであろうが、事は図書館の根底を揺さぶる大問題である。
以前他の記事でも書いたが、明治の初期、日本に図書館という施設が出来た頃には「見苦敷風躰之者ハ不許入館候事(借覧規則)」なんて注釈があった。今はない。というか、割と日本の図書館の黎明期辺りで風体に関する規則は消えたらしい。浴衣で来るとか職人が前掛けして来てたなんて話は散見される。

出羽守になって大変恐縮であるが、アメリカではホームレスからの脱却支援を図書館側で行っているなんて話もあるし、こちらの記事ではちらっと北欧(ルター派が多いエリア)の図書館は教会での読書啓蒙活動がコアにあり、その結果として貧困層への炊き出しなどが行われていたなんて話を記載したこともある。
ホームレスを排斥して「図書館にホームレスがいなくなる」のと、図書館を活用して知識をつけてホームレス状態から脱却し、結果的に「図書館からホームレスがいなくなる」のは似てはいるが全く違う話だろう。或いは、図書館に眠る物語の数々から生きるエネルギーを貰うのだって良い。

私個人は「図書館を居眠りする場所と決め込んでる不埒者」は図書館の本質的な機能を理解しない不逞の輩として排除してもいい(うっかり寝てしまうものはうっかりせぬ様尽力せよ)と思うが、ホームレスの図書館利用を妨げる事に対しては断固として反対する。
図書館内部に飲食店を併設した結果としてホームレスの排斥を(衛生上の問題から)行わなければならないのであれば、それはホームレスの皆さんではなく飲食店を図書館から叩き出すべきである。ふざけんな出てけ!

 

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