Twitterでだいちゃん経由で面白いネタを教えてもらった。

テーブルトークRPGと呼ばれる遊びがある。1970年あたりにアメリカで始まった遊びであり、今現在ロールプレイングゲームと呼ばれるコンピュータゲームなどの祖となった遊びである。細かい説明はWikipediaや好事家の解説に任せるとして概略を説明すると、ドラクエで言うところの「スライムが現れた!」等の判定を行うゲームマスター(多くのゲームではこの語を用いるが、キーパーとかダンジョンマスター等と言う場合もある)という役割の人物に任せ、プレイヤーの操るキャラクターを通じて問題の解決をストーリー仕立てで行うゲームと言ってよい。

最も単純なシナリオには、「村を襲う盗賊やモンスターを退治する」「お宝の在るといわれるダンジョンでモンスターを排除しつつ宝探しを行う」等がある。何回もシナリオを繰り返し、ドラクエなどでおなじみの悪の大魔王を倒す目標を立てる場合もある。

正直私もそのゲームで随分遊んだ口であるし、マニアに分類される人間だからほっとくと物凄い分量のテキストを書き始める可能性が極めて高いので、自制心を働かせて説明はこの程度にしておこう。

今回、このブログでも散々取り上げている武雄市の図書館がTRPGを公共図書館内でイベントで実施するらしい。正直どんな目的でどんな風に遊ぶかは現時点で分からないのだが、公共図書館でTRPGを遊ぶ場合、図書館のレファレンス機能を活かしたシナリオを作成し、参加者にレファレンスの喧伝を行うことが可能かなと思い、本稿を執筆している。

カレントアウェアネスポータル(国会図書館が運営する国内外の図書館の取り組みを紹介するサイト/サービス)をご覧頂いていればご存知であるかと思うが、近年の図書館では図書館の新規利用者を開拓する為に色々な取り組みを紹介している。ビブリオバトル等の図書紹介をバトル仕立てにしたイベントや、幼児をターゲットにした「ぬいぐるみお泊り会」等を開催している。私が補足していないイベントもあるだろう(私も熱心にカレントアウェアネス見ている訳ではないし:苦笑)

しかし、私が知る限りでは今までの図書館のイベントって「読書の楽しさの宣伝」とか「読書への誘導」であり、リファレンス機能の喧伝を目的としたイベントは見かけなかった。そして今回のTRPGに関しては(やり方によってはだけれども)参加者に図書館の持つレファレンス能力という部分を宣伝できる可能性がある。

コンピュータRPGでも(もちろんTRPGでも!)ゲームを進める中である種の謎解きが要求される事がある。
先にも述べた通り、テーブルトークRPG(TRPG)でもコンピュータRPGでも「困難を解決する」のがゲームの根本である。多くの場合困難の解決は戦闘によって行われる。困難とは敵を倒すために必要なアイテムを探索することだったり、レベルを上げて敵を倒せるだけの戦闘力を獲得する事だったりするが、それは戦闘という部分が極めて単純で結果が出やすく、特にコンピュータRPG等では謎かけや推理要素を組み込むのが難しいからに他ならない。(初期のコンピュータRPGであるウィザードリー等ではこの要素が残っていたりもするが、インターネットや検索エンジンが発展した今だと、折角の困難要素があっという間に検索されてしまうので、最近は余り見かけない)
しかし、その謎かけや謎解きを行うに際し、図書館の持つレファレンス能力を駆使して行うことも、決して無理ではない。例えば簡単に思いつく物として、扉が何か魔法のカギが掛かって拓かない時、扉の部分にラテン語の単語が書かれているとしたら、どうだろう?

それを読めば開くかもしれない。しかし読み方は?

西洋の知識人層であればラテン語を読める人も多かろう。日本ではどうだろうか?
そして…ラテン語の単語の発音は図書館にあるラテン語辞典で確認できたりしないだろうか?(別にタガログでもアラビア語でも何でも構わないのだが)

謎解きの手がかりとして、家紋が提示された時はどうだろう? 家紋辞典等があれば家紋の正式名称を調べ、正式名称からどこの家の家紋か検索する事もできるのではないか? (インターネットの検索エンジンの弱点は、言葉が分からないと検索できない部分にある。家紋などの画像情報をキーに検索を行うことは意外と難しい)

問題解決の手段として用意されているのがリファレンスサービスなのだから、それがどんな問題であれ…ゲームの問題でも政策策定上の問題であれ、遺産相続の問題であれ、レファレンスサービスが役立つのは当たり前である。TRPGである必要性はないが、TRPGを活用してリファレンスを知らしめることは可能である。(故に、TRPGに固執せず別の方法を探すのもアリだろうし、TRPGでやってしまうのもアリであろう)

ただし、一般的なTRPGを図書館で遊んで、更にレファレンスサービスの喧伝をするという場合には幾つかの問題点がある。

市販されているTRPGのゲームルールは、大体の場合ファンタジー世界を舞台にしている。しかしファンタジーと言っても色々な物があり、参加者にただ「ファンタジー世界」と伝えても、世界観が必ずしも一致するとは限らない。図書館人なら理解してもらえると思うが、アーキペラゴ(ゲド戦記の舞台世界)とハリーポッターは同じファンタジーに分類されるが世界観は随分違う。蛮族コナンのシリーズとホビットの冒険とドラゴンクエストの世界はやはり違う。世界観説明がめんどくさいのである。
また、最近はゲームシステム自体が単純化しているとは言え、ゲームキャラクターのパラメータが細分化されていればそれを説明するのもめんどくさい。アジリティ(敏捷性)とデクスタリティ(器用度)、インテリジェンス(知識)とウィズダム(賢明さ)の違いの説明などがその最たるもので、これを一々参加者に周知徹底するのは大変にめんどくさい。

ただ単に図書館でTRPGして楽しいな!で済ませるならば問題は少ない。時間は掛かっても何度か同じメンバーで遊んでいけば周知徹底は可能であろう。その場合図書館を拠点としたTRPGサークルを作るという話なので本稿では扱わない。それは別に図書館でもいいが公民館や学校でやってもいい話だからだ。
図書館で行う必然性を考えたとき、図書館ならではの機能を絡めることは必須であり、そこでリファレンスサービスの宣伝を前に出すのであれば、固定メンバーで何度もゲームをすることより、できるだけ多くの人々にゲームを通じてリファレンスサービスの利用を教える方が良いだろう。

すると、背景世界説明面倒背景世界説明を行う時間を短縮するために、舞台は現代日本にする方が良い。判定は手軽に入手できるd6(所謂1から6までの数字が刻まれた6面のサイコロ。TRPGでは伝統的にこのサイコロ以外の4面とか8面、10とか12とか20までの乱数を発生させるダイスの使用も容認される)使う方が楽だろう。
ほぼ全てのTRPGでは各プレイヤーの扱うアバターとしてキャラクターを作成するが、これも一々作成するのも面倒であるし、パラメータの説明や判定の方法を事細かに説明するのも時間がかかる。(一般的にある程度慣れた人々に対してキャラクターの作成を行わせたとしても、4-6人でキャラクター作成完了するまでには1時間程度の時間がかかる)
いっその事、参加者のアバターは要らないのではないか?

TRPGの肝は「目の前にある問題を自分たちの能力ややり方で解決していくこと」である。困難解決をレファレンスサービスの活用によって行うなら、実のところステータスだのパラメーターだのは不要なのではないか。

NPCと呼ばれるGMがコントロールするキャラウター(ノン プレイヤー キャラクター NPCという)のみパラメータや判定を行わせ、それ以外のプレイヤーは先のキャラクターに助言のみを行う用にするならば、パラメータは不要である。(これでプレイ時間が1時間増えたぞ!)
サイコロを振って行動の判定を行うことをロールというが、そのロールの概念説明すっ飛ばして、実際にNPCの行動判定で「こーゆー時にはこれとこれ足して14以上なら成功…コロコロ…失敗」みたいにやって見せる。これで良いのではないか。

もちろん、TRPG経験者は同意してくれると思うが、サイコロを振るのはTRPGの楽しみの一つである。それを完全に削除してしまうのは楽しみの一つを捨ててしまう事にもなりかねない。
例えば異界から来た勇者がこの世界に対する無知故に失敗を連続すると。そこでプレイヤーから「こうしてみたら?」というアドバイスがあったら補正値にボーナス付けて「アドバイスしたプレイヤーにサイコロ振らせる」 皆がNPC勇者に協力する事で話が上手く回る…というのはどうだろう?
TRPGの楽しみの一番大きな所は、自分が参加した事で事件や物語の進行に影響を与える事である。どれだけサイコロを振ろうが、どれだけ活躍しようが「ストーリーの進展に全く寄与しない」のであれば、多くの場合プレイヤーは失望する。王様の暗殺計画があった、必死に敵と戦った、暗殺者も倒した、しかしやはり王様は暗殺された…これほどつまらぬ事はない。同じ死ぬにしても何かの変更があれば満足できるが、最初に予定/予期された事が自らの関与によってなにも変わらなかった場合、多くのプレイヤーはミッション失敗と捉えるだろう。逆に言えば、サイコロを振りたがるのは能動的に物語や事件に関与し、良い結果を引き出したいからであり、その要求がサイコロを振る以外で充足されるならサイコロを振る必要はない。多くのTRPGでサイコロ等を用いた行為判定を行うのは、公正に判定を行わなければごっこ遊びになってしまう…意見対立時に理知的で参加者全てが納得できる裁定を行うための手段だからに過ぎない。

先のようにプレイヤーがキャラクターを持たず、NPCだけがパラメータやステータスを持ち、行為判定を行う際に、プレイヤーからのアドバイスが的確な知識に基く物ならボーナスが大きいのだとしたら、最後の敵相手に「ここは俺が食い止める! あの敵の弱点を調べて来てくれ!」みたいな形でレファレンス使う方向に誘導できるし、調べた結果が大きな成果になったら嬉しかろう。(この時、自動書庫から本が出てきたり、レファレンスサービスの人が神速で検索かけてくれたりするなら…それを知らない人が居たのだとしたら、軽く感動すると思うぞ)

以下、雑多な「図書案でTRPGに使えそうなネタ」を記載しておく。

どこか異世界から現れた旅人が、この世界に「xxx」に効く薬があると聞いてやってくる。普通に薬局の薬剤を提示してもいいが、できたら継続的にその薬が手に入ると異世界でも役に立つだろう(定期的に薬を買いにこの世界に来ることはできないと明言)。そこで薬草を検索し、更に異世界の気候を考慮して栽培しやすい品種を調べる。まずは病状を聞いて病気を特定、その病気に効く薬草をいくつかリストアップして植物図鑑で適合する気候や栽培の詳しい方法を教える。

異世界で魔物が暴れている。封印の呪文が見つかったが異世界の図書館は魔物に破壊されて書物が散逸してしまった。呪文を解読する為に辞書類を利用したい…が、この世界に来た勇者はこの町の市民でないので図書館を使えないのだ! かくして異世界の命運は図書館を利用できるプレイヤーたちの手に託された。
無論、勇者の家の住所が良く分からないのでT-カード機能付き図書館カードが発行できないのは言うまでもない。

未来の当該自治体から人がやってくる。未来のこの町の資料や遺物が破損したので、失われる前の状態を確認して復旧を行いたい。(その調査の過程でこの町の過去の出来事等をプレイヤーともども知る事になる)

過去の世界から「治水どうしたらいいか」人が訪ねてくる。そこで古地図などを駆使して「現在の当該地区を流れる川」が過去からどの様に「改良」され、水害を防ぐ様になったかリファレンスして行く。

異世界から来た系のストーリーの場合、手段とか方法を伝授した段階で結果が見えないという問題がある。
手紙などを用いて「こうなりました、ありがとう!」系の結末を用意すると良いかもしれない。

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