現在はスターバックスコーヒーとツタヤが混じってキメラ化してしまった武雄市図書館だけど、そもそもこの図書館の「今回の改装前の状況」はそんなに酷かったのだろうか?
なるほど、市長が言うように利用者は三割だし、あーだしこーだし・・・・・

が、私たちは大事なことを見落としているのではなかろうか。
数字はそれ単独では意味が無いのだ。三割って言うのはそんなに少ない数字だろうか? 「やきう」だったら年間3割の打率は誇っても良いだろうし、期末テストの正答率が3割だとかなりヤバい。
数字はそれ単独で切り取って見るのではなく、他との比較や状況を把握した上で始めて意味を持つ数字になる。改装前の武雄市図書館はそんなに酷かったのか?

そもそもおっちゃんが知る限り、利用者が住民の三割程度って言うのは「普通のこと(全国平均から見て)」なのである。
そこで今回、図書館に行って日本の図書館の統計資料2012年版を紐解くことにした。
資料のP90-91の県番号41が武雄市図書館のデータだが、これを同程度の人口(奉仕人口51000人規模)と比較してみよう。

まず、奉仕人口が同規模の市町村立図書館所有自治体は日本全国に9箇所存在する。
益田市
新城市
真庭市
諏訪市
田川市
赤穂市
鉾田市
日置市
武雄市
この内4つの市では中央図書館と分館に似た構成をとっているらしく、市内に複数の図書館を設立している。近年ではこの様な形態をとる市も増えており、パラパラと見た限りでは人口43000人程度の西予市など市内に9館の図書館を持っている。
ただしここで注意が必要なのだが、市によっては合併により大型化している市もあり、その様な場合合併前の市町村がそれぞれ運営していた図書館が合併後に分館となる例もある。必ずしも複数の図書館分館を構えているから素晴らしいと言うことはない。(ただし、おっちゃんが注視している武雄市も合併しているので、分館があっても良さそうな気はしないでもないが・・・)
まず床面積を見てみよう。複数の数字がある場合は分館があることを示し、<>で囲った数字はサービスポイントや移動図書館の床面積である。
床面積:
益田市 2674 + 606 + <3>
新城市 2021
真庭市 600 + 290 + 290 + 231 + <1>
諏訪市 2583 + 614
田川市 2104 + <1>
赤穂市 3316
鉾田市 928 + <2>
日置市 750 + 88 + 593 + 1084 + <1>
武雄市 2270

武雄市の図書館の床面積は決して狭すぎる事もないし、広すぎる事もない。赤穂市の図書館の面積はかなり突出しているが、内情を確認すると2F部分に視聴覚室や会議室などのコミュニケーション施設を準備しているためであると判る(参考 http://www.ako-city-lib.com/category/1748638.html )
益田市の図書館もフロアプランは確認できなかったが、なんかゴツイAVルームがあって驚いた(なお、雑誌スポンサー募集中らしい)
日置市の図書館は中央図書館よりも大きなふきあげ図書館を有する。地域の小学校から至近で中学校や高校からも1km程度の距離にあり、かなり気合を入れて所謂「最近流行の形式の図書館」として新設したもののようだ。
真庭市は2005年に5町4村が合併して今の形になったらしいので、現存の図書館は以前の区割りの時からの引継ぎだろう。真庭市でもこの状態に甘んじているわけではなく、新図書館構想を平成24年11月に策定している。http://www.city.maniwa.lg.jp/webapps/open_imgs/service/0000000044_0000017814.pdf
見れば判るが、きちんと統計資料や同規模自治体の現状を確認し、基本設計をかなり入念にやっている様だ。国の支援を求める計画もあるようだが、このまましっかりと基礎計画をまとめて推進するのであれば、おっちゃん個人としては納得できる計画である。(少なくともJLAから非難文出されたりはしまい)
次に職員数。左から順に専任計(兼任)/うち司書(兼任)/非常勤(委託派遣)となる

益田市 (5) /0 (19)
新城市 (2) /0 (5)
真庭市 2 /0 3(3)
諏訪市 5 /2 10
田川市 2(3) /2(1) 8
赤穂市 2 /1 9
鉾田市 3 /0 3
日置市 5(2) /4 11
武雄市 3 /1 17

武雄市の職員数は非常勤(パートタイマーか?)が多いものの、かなり頑張っている。人を雇用するのは非常に(財政的にも)困難を伴う。真庭市の職員数は4館合計の数字であり、そこそこ人数が多そうに見える日置市も4館合計人数であるところに着目して欲しい。

・・・・ん?
2012年は平成24年。武雄市の司書/司書補は統計データ上1人になっているのだが・・・・・
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2249578.article.html 左記のH24年報道では「運営人員の中で司書は9人(現行15人)になり、」なんて書かれている。司書職をパートタイマーで水増ししているのか? もしも実際に15人居たなら、それはそれで他の図書館にはない「レファレンスサービスにも対応可能な人員の多い」図書館として誇るべきところだと思うのだが、どうだろう? (市の規模的に過剰であると見る事も出来るだろうが)

蔵書数 最初に合計数。次に各館ごとの蔵書数でまとめた。単位は千冊

益田市 193 168/26
新城市 150
真庭市 131 63/28/40/4
諏訪市 233 193/41
田川市 184 159/25
赤穂市 171
鉾田市 88 72/16
日置市 188 75/13/42/59
武雄市 186

複数の館を抱える市町村では基本書が重複することもあり、蔵書数が増えやすいと推測される。
ここで見ると武雄市図書館の蔵書数は決して少な過ぎたりはしないのだ。同等規模の市町村で、単館運営している市町村としては極めて普通である(恐らくJLAの出している基準に従った冊数に達するように、図書館側で調整しているのだろう)

次に「受け入れ図書数」と「年間除籍冊数」を見てみよう。受け入れ/除籍で表記する

益田市 3501/3108
新城市 8030/2417
真庭市 7735/0
諏訪市 7629/2626
田川市 6866/3649
赤穂市 4931/0
鉾田市 3589/17
日置市 7649/668
武雄市 8813/1814

田川市の除籍数が多いのは改築の為かもしれないし、書架が足りていないのかもしれない。図書館と言えども有限の書架の中に本を保管しなければいけないので、無限に本を増やしていける訳ではない。赤穂市は図書館新築っぽいので余裕があるだろうし、真庭市は新しい図書館を作る計画中なので、意図的に蔵書数を(新図書館完成前から)増やしつつあるのかもしれない。
また、除籍というのは汚損などによっても発生するので、数多く破棄しているのは「皆が読みまくったから」かも知れない。ここでも武雄市図書館はかなり平均的な数値を示している事が判る。

次に、個人貸し出し登録者数と貸し出し件数(共に単位1000)

益田市 40.8 167
新城市 20.0 195
真庭市 13.2 117
諏訪市 39.9 294
田川市 24.2 239
赤穂市 30.1 337
鉾田市 6.5 100
日置市 19.2 250
武雄市 36.2 339

・・・・・普通に同規模市町村内で見ると、貸し出し申請人数も貸し出し数も武雄市図書館(改装前)、トップレベルなんですが。

その他の項目で比較しても構わないが、大体の傾向としてはご理解頂けるかと思う。武雄市図書館は同規模の都市と比較して別に劣った図書館ではなく、むしろ改装前も普通に「統計データで見る限りは」普通か、或いは普通よりもちょっとイイ図書館だったのだ。蔵書数も増加傾向にあるし(これは前回の改築時にしっかり余裕を持った設計をし、書架に余裕があるからできる事だ)、市民の貸し出し数も取り立てて悪い訳ではない。なお、割合図書好きには知られた話であるのだが、図書館王国は滋賀県で、人口当たりの蔵書数日本一、図書館利用者数は全国二位(一位は東京都)、貸し出し冊数は全国平均の2倍のスコアで1位(一人当たり年間9冊近く借りている)だそうだ。
前に読んだ町立図書館設立の話でも、事前の視察で滋賀県に向かっている。実際に滋賀県で人口5.3万人の都市である湖南市のデータを並べてみよう。

床面積 2299 + 751 + <1>
職員 10(4) /8(2) 1
蔵書数 374
受入/除籍 14003/11764
貸出登録/件数 28.7/491

蔵書数とか年間受入数、貸出冊数は負けているものの、そんなに目立って武雄市図書館が劣っている訳ではない。利用者数に関しては図書館王国滋賀県の同規模都市を上回っているのだ。

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・・・・・・・・・・
改装する必要、あったの?

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